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町家改修工事設計事例
(姫路市/2025年竣工)

​改修前の様子

 築年数は不明ですが、少なくとも100年以上は経過しています。

建物の規模は間口4間、奥行き9間の2階建てとなっています。そのさらに奥には増築された部分が続いています。

 道路に面した下屋部分は増改築が施され、板金の屋根、シャッター、アルミ製の玄関建具が取り付けられており、町家らしい外観は失われていました。

 トオリニワには階段が設けられており、そこから2階に上がれるようになっていました。

この度の改修では、階段の位置を変更して、主な生活の場となる2階の間取りに適した場所に移しています。

 

 改修前の2階の間取りは細かく部屋が間仕切られており、非常に閉塞感のある空間となっていました。

少しでも明るく開放感の得られる空間を作りたいと考えました。

​改修工事の様子

​改修後の様子

 本来の町家らしい外観を施主ご夫婦は希望されており、少し減築をするかたちで、元々のものに近い瓦葺きで出格子のある姿に改修しました。

 施主のご主人が潜り戸の付いた木製の大戸と、出格子部分の格子を中古でネット購入されたものを取り付けています。大工さんがその古い建具に合わせて枠を作ってくれました。

 いつもフレンドリーなご家族の雰囲気に合わせて、大戸の横は壁にせず、透明のFixガラスになっています。

 瓦は六四版とよばれるサイズのものを葺いており、現代一般的に見られる瓦より少し小ぶりの見た目になっています。

ぱっとは分かりにくい点なのですが、実は瓦が小さいことで上品な外観の屋根に仕上がっています。

 1階は町家本来の間取りのまま残し、2階をメインの生活スペースとするために、大きく間取りを変更し改修しています。

 構造に絡まない柱や壁は取り払い、水廻りを除いて大きなワンフロアのような空間としています。

 

 2階のリビングと、寝室を兼ねた畳スペースとは4枚の引き込み障子を介して繋がっています。

 

 リビングの天井の筒状の空間は、解体時に偶然現れたものをそのまま利用しています。

ダイニング・キッチンは元々の屋根裏の梁や野地板をそのまま表わしにしています。

 

 野地板の上には新たに断熱材を敷いて、その上に瓦を葺き直しました。

 

 建物の構造的な都合から生まれる天井高さの違いや、床の段差などを活かすことで、シンプルな間取りの空間に変化を与えるようにしました。

 内装の漆喰や土壁は、施主が実際に塗られています。

初めてにもかかわらず、丁寧に試行錯誤されながら仕上げられています。​

建具の多くは中古のものを購入したり、元々あったものを利用したりして、再利用するかたちをとっています。

建物を改修していく上で、できるだけ古いものを活かした方がお家の雰囲気には合う、という思いを施主と共有していました。

建具だけでなく、壁や天井も残せそうな部分はできるだけ残す方向で工務店さんには工事を進めていただいています。

建物がこれまで歩んできた時間の流れを受け継ぎながら、施主ご家族のこれからの暮らしに寄り添うよう、丁寧に手が加えられています。

懐かしさと新しさが調和する暮らしの舞台として、町家のアップデートが引き続き行われています。

​お施主様のコメント

 出会いとご縁を大切に、この家とともに

塩本さんとのご縁がきっかけで、子育て期の住まいの選択肢として町家を考えるようになり、2023年に物件探しを始めました。

町家としての姿を保ちつつ、売却していただける物件に出会えるのは奇跡のようなことで、この家との出会いに感謝しています。

夫婦ともに田舎で育ったこともあり、街中にいながらも、ゆったりとした気持ちで過ごせる暮らしができればと願っています。

改修前の状態のまま1年暮らしてみると、もちろん、冬は寒く、夏は暑いのですが、春・夏・秋の季節は自然と一緒に暮らしているという快適感で、以前の住まい以上に四季の移ろいを感じられることに気づきました。

子どもたちにも、この家を通して季節の変化を感じながら、暮らしを楽しんでもらえたらと思います。

これからの改修を経て、さらに快適で心地よい住まいとなり、「o家」としてたくさんの思い出を刻んでいけたらと、今から楽しみにしています。

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